みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、先日より販売が開始された Anker の新型モバイルバッテリー「Anker PowerCore 10000 PD」をレビューします。

本製品は、最大18Wの USB-Power Delivery(以下 USB-PD)に対応した モバイルバッテリーながらも、iPhone XS Max よりも軽量でコンパクトな作りが特徴の製品です。

・開封&レビュー

パッケージ

内容物は、本体、充電用ケーブル、ポーチ、取り扱い説明書

本体

出力端子は USB-A と USB-C

側面にインジケータと電源ボタンが配置

本体底面

付属の USB-C – C ケーブルは USB 2.0(3A)で問題なし

・本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、メーカーが提供する PDO と実際の PDO が一部一致していませんでした。メーカーは、15V/1.2A と本体や説明書に記載していますが、実際には20V/1.25Aであり、0.05Aほど実際は高いようです。

しかし、この程度であれば誤差の範囲であることから大きな問題とはいえません。また、USB-PD 以外の急速充電への対応も見られず、大きな問題はないといえます。

次に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

確認の結果、9Vおよび15Vの保護機能が有効になるタイミングが公称値よりも0.1A程度早いものの、大きな問題は認められず保護機能は正常に動作するといえる状態であることを確認できました。

保護機能の動作タイミングが公称値よりも早いのは、場合により景品表示法上の問題となる場合がありますが、この程度であれば実用上の問題はないに近いことから、あまり気にする必要はないと思います。

最後に、iPad 9、iPhone SE(第2世代)での充電状況を確認します。

確認の結果、iPhone・iPad で18Wの高速充電が作動していることを確認できました。また、USB-A ポートにおいても iPad を Apple 2.0A で充電できていることを確認できました。

最後にモバイルバッテリーとしての性能を確認します。

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5.0V/2Aの出力要求を本体のバッテリー残量がなくなるまで続けた結果、公称容量の10,000mAhに対し、実効容量が30.26Wh(8,178mAh)(-18.2%)と変換ロス値標準ラインの -20% を上回る結果となりました。

このことから、エネルギー効率にも優れた製品となっていることがわかります。

なお、本製品の容量は10,000mAh(36.3Wh)ですので、手荷物に限り航空機への持ち込みが可能です。

・充電回数の目安

本製品が満充電の場合に、iPhone や iPad などの各デバイスを何回程度充電できるかは以下をご覧下さい。

・iPhone XS   約3回
・iPhone XS Max   約2.5回
・iPhone 8   約4回
・iPhone SE   約4.5回
・iPad Pro 12.9   約0.8回
・iPad Pro 11   約1回
・iPad 9.7   約0.9回

大抵の場合、大型スマートフォンで2回以上、中型で3回以上、タブレットでは1回程度が充電可能回数の目安となります。

・出力関係のその他仕様について

本製品のその他の仕様として、「低電流モード」「合計最大出力 28W」というポイントは押さえておくべきだと考えています。

低電流モードは、昨今爆発的普及をみせているワイヤレスイヤホンや、小型ウェアラブル端末の充電に最適化されたモードとなっています。

本体にある電源ボタンを2回押す、または2秒間長押しすると本モードに移行し、通常の充電モードでは充電できない小型バッテリー搭載製品の充電に対応します。

また、合計最大出力 28Wについては、現時点ではかなり珍しい仕様だと感じています。

Amazon などで、18W出対応の USB-C ポートと USB-A ポートを搭載した製品を見ていると、大概の製品が「合計18W出力」。すなわち、USB-C ポート利用中は USB-A ポートは利用できない、もしくは USB-C ポートからの出力を落とすという仕様の製品ばかりです。

そもそもこのような仕様は、安全性上はほぼ問題ないものの、USB-PD 規格上では規格違反(CとAの回路混同)となります。

その様な製品が溢れる中、USB-A と USB-C ポートが独立して機能し、片側のポートを利用中でも、もう片側のポートに影響を及ぼさない仕様は、かなり機能性に優れていると感じました。USB-PD 製品の小型化、低発熱をを売りにする同社のアドバンテージが、わかりやすい形で証明された形となっています。

詳細な仕様については分解を実施していない為、言及は避けますが、本体下部の仕様を見る限り、2つのモバイルバッテリーが1つにまとめられた様な作りとなっており、それぞれの回路が独立し、最大28Wの出力を実現しているものと推測できます。

参考:本体下部の仕様に「電池容量 2×5000mAh」「定格容量 5000mAh 7.26V/36.3Wh」との記載がある。

・その他の機能について

本製品には、Ankerの独自技術「PowerIQ」が搭載されており、あらゆる端末を高速に充電することができると謳われています。

この機能は、スマートフォンを本体に接続した際にはスマートフォンに適した電流を流し、タブレットが接続された時にはタブレットに適した電流を流す。と言う動作を行う機能の名称で、接続先に合わせた最適な電流が流されるため、充電時間の短縮に繋がるというものです。

また、USBポートに必要以上の負荷がかかった時に作動する「サージ保護機能」と「ショート防止機能」を搭載しており、モバイルバッテリーに必要な安全機能も揃っています。

・総評

やや気になる点はありますが、現時点で完璧な製品と言っても過言ではないと思います。

規格通りの設計、理想的な設計の両方を持ち合わせており、使い勝手も抜群に良いと感じています。もはやこれを超える10,000mAhクラスのモバイルバッテリーは、記事執筆時点では世の中に存在しませんし、今後、年単位で同じ品質を満たす製品が登場するかも定かではないレベルの仕上がりです。

しかしながら、本製品にも多少の弱点はあり、18WというW数がネックになり充電できない製品(主にノートパソコン)や、本体の充電に別売の USB-PD 対応充電器が必須になる点は、マイナスポイントと言えます。また、USB-PD 充電器を利用しない場合の充電時間が9時間と、同容量製品の倍近くかかる点も個人的には引っかかります。

現時点では、使う人を選んでしまう可能性がある本製品ですが、充電規格の将来性を考慮すれば「勝手おくべき」製品ですので、是非チェックしてみて下さい。

最終更新日:2022年8月24日

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